「さて、昨日の話し聞かせてもらっていいかしら?」

シャルはソファに座るなり、いきなり本題に入ってきた。

ま、どうせ私も説明はしなきゃいけないと思ってたし、ましてやシャルやキャシーたちが狙っていた人が私と出て行ったんだから、それなりにいろいろ聞かれることは覚悟していた。

私は淹れたての日本緑茶をシャルの前に置くと、正面に座った。

「シャル…昨日はごめんね?その…出て行ったままずっと携帯でなくて…」

私はとりあえずシャルに許してもらおうと謝った。

すると、今まで腕を組みながら少し怒った様子だったシャルの顔が、一瞬で笑顔になる。

「あら、何言ってるのよ!私たち、全然気にしてないわ?むしろが男性に興味持ってくれて嬉くらいよ?」

「……………え?」

ったら今まで全く興味示さなかったから私たち、ちょっと悲しかったのよ?だってほら、やっぱり女同士で恋の話ってしたいじゃない?」

「は、はぁ…」

「でもってやっぱり面食いだったのねw」

「はぁ?!」

シャルは興奮しながら私の隣に座りなおし、肘で突っついてくる。

そしてその顔といえば…元の顔が分からないくらい(酷ッ)ニヤケて歪んでいた。

「私、結構合コン行ったりして場数を踏んできたけど、さすがにオーランド程カッコイイ男なんて今までいなかったわよ?」

「そ、そうなの?」

「そりゃそうよ!だから昨日、二人が逃げたって聞いたときはちょっと凹んだわ?」

シャルはペロっと舌を出しながら苦笑した。

さすがにそう言われると罪悪感がこみ上げてくる。

「でーも!は気にしないで良いからね♪」

私の肩に手を乗せながら、首を少し傾けて「ね?」と笑うシャルは何だか可愛く、輝いて見えた。

シャルはお茶を一口飲んでカップを置くと、何だか少し緊張している感じがする。

「実はね…今日ここに来たのは他にも理由があったからなの…。に聞いて欲しくて」

「え?どうかしたの?」

シャルは何だか少し顔を赤らめて頷くと、私は思ってもみない言葉を耳にした。



「私…マイクと付き合うことになっちゃった///」


「………は?!ど、どうしてそんな展開になっってんの?!だって昨日あったばっかりのマイクでしょ?!」

「そうよ?でも、たちが出て行ってからも結構盛り上がって、みんなそれぞれ良い感じになったのよ。で、何だかマイクと話してると楽しくて…気が付いたら私、家の前でキスされてたの!」

「で、でもそんな…早すぎよ!出会ってそんなに経ってないのに」

「恋に落ちるのに時間は関係ないでしょ?それに、彼ったらすっごく優しくキスしてくれて『ああ、本気なんだな』って思ったくらいw」

「シャル……」

「でも、確かにが心配するのも分かるわ?私だってこの展開の速さにはビックリしたんだもの。マイクのことだってまだ何も知らないし、普段のマイクを見たことがないから戸惑いがあるのも事実。だけど、これからお互いを知っていけばいいじゃない?って思ったのよ」

何だかシャルが本当に嬉しそうに話すので、私はふぅっと息をついた。

いくら私が心配したって結局この話は事後報告で、当人同士でそういう話になったのなら私が口出しすることじゃないと思い、これ以上は何も言えなかった。

ただ一言「おめでとう」と言えば、シャルはとっても嬉しそうな顔をして「ありがとう」と答える。

こんな幸せそうな顔をしたシャルは久しぶりで、さっきまで反対していた私まで何だか嬉しくなってきて笑顔になっていた。

これで合コン女王も少しはなりを潜めるだろう…そんなことを考えていたら、シャルは「それで?オーランドとはどうなったの?」と話を切り出してきた。

折角話が逸れたのに…と思いつつシャルを見ると、とってもワクワクした顔を私に向けている。

「はぁ〜…」

「ちょっと、溜息なんてつかないでよ。溜息つくと幸せ逃げていくんだからね?」

なんて子供染みたことを言っていて思わず噴出してしまった。

「別に…シャルが思ってるようなことは何もないわよ?」

「いいから!昨日のその後を全て話して」

私はついに根負けして、昨日のことを全て話した。













「え?それだけ?」

「そうよ?だから言ったでしょ?何もないって」

「なーによ〜ぉ、本当にそれだけなの〜?」

前もって「何もない」と言ってから話をしたのに、シャルは何だかブー垂れてる。

でも、私からしてみれば昨日のことが「何もなかった」と言えることではなかった。

初めて会った人と手を繋いで走って逃げたり、初めて会った人と二人でお酒を飲みに行ったり…私からしてみれば「大事件」だ。

「私は別に出会いを求めて合コンに行ったわけじゃないのよ?だから何もなくて当たり前でしょ?」

「でも…マイクが言ってたよ?『あんなことをするオーランドは初めてだ』って。彼もすっごいビックリしてた」

「そ、そう…」

「何かね、マイクの話によると一ヶ月前に恋人に振られてからちょっと元気がなかったんだって」

「え?!」

「だから昨日の合コンも本当はずっと『行きたくない』って言ってたらしいんだけど、マイクが少しでも気晴らしにって無理矢理誘ったらしいわ?」

「………そうだったの」

私はシャルの話を聞いて何だか気分が沈んでるのが分かった。


……一ヶ月前まで恋人がいたんだ……

そんなことを思っていると、シャルが私の背中をバシッと叩いた

「〜〜〜ッ!何すんのよ!」

「なーに落ち込んでんの!やっぱり、オーランドのこと気にかけてるんじゃない♪」

「ッ!!違うわよ」

「あらら〜?顔、真っ赤よ?」

私が頬を膨らませながら否定すると、シャルはニヤケた顔で私の頬をツンツンと突っつく。

「別に良いじゃない、そんなムキになって否定しなくたって。それに…また会いたいって思ったんでしょ?」

「それは…そうだけど…」

「別に今すぐ付き合えって言ってるわけじゃないんだから、もっと気軽に考えればいいのよ!」

「……う…うん…」

私はとりあえずそう返事をするも、さすがにまだオーリィと自分が付き合うだなんて想像すらできない…と思っていると、シャルが神妙な顔をして話しかけてきた。


「ねぇ、…」

「ん?何?」

「ずっと聞きたかったんだけど…って日本で彼氏とかっていたの?」

「え?!」

「いつもその話するとはぐらかしてたじゃない?もしかして、日本で何か辛い恋とかしてきたのかな?なんて思っちゃったんだ…。あ、でも違ったらごめんね!?」

「………」

「いや、別に嫌なら話さなくていいの!ただ…ちょっと気になっちゃって。今まで恋愛関係の話ってから聞いたことないなって思っただけだから」

シャルは慌てながらそう言うと、少しわざとらしく「やっぱこのお茶美味しいね」なんて言っている。

確かにいつもシャルやキャシーたちの恋愛話を聞いてるだけで、私は1度も話したことがなかった。

思い出すのが嫌で、ずっと心の奥にしまっていた想いがある。

でも信頼してるシャルだからこそ、今ここで話そう…。

「シャルが思ってること…当たってるよ?」

「え?」

「日本でのこと…。私、ずっと引き摺ってて恋愛に臆病になってたの…」

…」

「私がまだ18歳の時…ちょっとしたフードコートでアルバイトしてたの。スタッフはみんな女の子で、凄く仲が良かった。オーナーもすっごくいい人で、バイトが休みの日でも遊びに行っちゃうくらい楽しい所だったんだ」

私はイギリスに来る前のことを思い出しながらシャルに話した。

「だけどね、スタッフが女の子ばかりの中で一人だけシェフで男性がいたの…。その人の第一印象は最悪で、最初は「嫌われてる」と思ってあまり話をしなかったんだけど、彼はただ単に人見知りをしてただけだったって気が付いたら…何だか話するのも楽しくなって…1・2年も一緒にいたら好きになってた」

「うん…」

「彼は年上だったからどっか余裕があって、またそれにもドキドキして…。スタッフの……特に仲が良かった人にずっと相談してたの。家も近かったし、私からしてみればお姉ちゃんみたいな、とても尊敬してて大好きな人だった…。だけどある日、私は学校の行事で10分くらい早く家を出たの…。いつもの道を歩いてたら……その人と彼が一緒に歩いてるのを見ちゃったんだ…。信じられる?早朝によ?」

その時、シャルがハッと息を呑むのが分かった。

「彼の家は電車で1時間くらいだから、その時、その場にいるなんてことあり得ないのよ…泊まらない限り…。私は鈍器で頭を殴られたかと思うくらい衝撃を受けて、駅のホームで散々泣いたわ?何かの間違いであって欲しいってね」

…」

「後で彼に聞いたら『付き合うことになった』って…。確かに私は彼女でもないし、彼が誰を好きになっても仕方がないとは思ってた。でも、まさか私が信頼して相談してた人と付き合うなんて…思ってもみなかったのよ。だから彼女に電話して聞いたの…どうしてそうなったのかって。彼女が言うには『飲みに誘われて、断る理由もなかったから一緒に飲みに行ったら、今度は家に行っても良いかって聞かれて、断る理由もなかったから家に入れた』って…。私のことは『断る理由』にはならなかったの?って聞いても『ならなかった』って言われて愕然とした…。さらに彼に告白された時も『断る理由がないからOKした』って」

「私はショックだったけど、もしかしたら私から相談持ち掛けちゃったから彼女も言い出せなかったのかな?と思って「彼のこと、好きなの?」って思い切って聞いたのに、答えは『嫌いじゃない』って…。それからしばらくは人が信じられなくなって、恋をすることが怖かった。また同じ想いをするんじゃないかって…」

その時、シャルがギュッと私を抱きしめてきて「辛かったね」「頑張ったね」って言ってくれて、私はそこでやっと涙が溢れた。

ずっと誰かに聞いて欲しかった。

ずっと誰かにそう言って欲しかった。

ずっと誰かに分かって欲しかった…。

そして今、シャルはずっと欲しかった言葉をくれて、私の『想い』は静かに散っていった。

前に進まなきゃ…

過去を引き摺って歩くのはもう止めよう。

「シャル…ありがとう…」

私、頑張るよ…

心の中でそう呟いて、明日から前向きに生きようと決死した。




     





あとがき

うーん…久しぶりすぎてすっごく微妙?ってか、オーリィ出てこんし!!(爆)

何だかずっとスランプ状態で、前回の時もやっとスランプ脱出か?!と思っていましたが、やはり無理だった(涙)

とりあえず書く気が起きた時に自分のペースで書こうと思い、こうしてやっと続きが書けました。

最後の恋の話は私の体験談ですが(爆)あんまり長くツラツラ書くのも微妙だったので、かなり省いたところがありました。ま、こうやって過去の話を書けるということは自分も多少なりとも成長したんだなと実感((笑´∀`))ヶラヶラ  そして実際の彼女への電話ではかなり怒り心頭で怒鳴り散らしました(●′艸` )ブッ  今となっては…いや、今となっても嫌な思い出ですけどねw

これからもなるべく続けて書くように頑張りますwもし共感してくださる方がいればメッセージ下さると嬉しいですw  では!





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