「マイク、ジョークはよせよ。面白くないぞ?」
「ムッ!信じないのか?いや、まあ、俺だって信じられないくらいだけど…でも、何だか昨日は彼女と離れたくないって思って…」
「それでキスしたって?」
「うッ;…そ、そうだよっ!」
俺は今、親友のマイクから昨日の話しを聞いていて驚いていた。
だって信じられるかい?!いや、俺は信じられない。
まさか昨日会った子とその日に付き合おうとするなんて…。
いつも締まりのない顔をしているマイクが、今は顔を真っ赤にさせながら『本気さ』を訴えてくる。
「なぁ、オーランド。恋に落ちるのに時間は関係ないだろ?俺の気持ちも分かってくれよ。な?」
「確かにそうかもしれないけど…」
そうかもしれないけど、昨日の合コンの雰囲気だとやはり心配になってくる。
だってまだ彼女たちと会う前のマイクは、以前写真を見て気に入ったって言ってたが目当てだったはず。
マイクが付き合うことになったって言う彼女(確かシャルって子だったな)だって、はっきりと分かる態度で俺にせまってた。
それなのに…何故?
「まぁまぁ!ここはお前も祝福してくれよ!彼女いない暦:半年!やっとこんな俺にもあんなに可愛い彼女ができたんだ!きっとこの辛く寂しかった半年間は、彼女に出会うための試練だったんだよ!」
何だか明後日の方を向きながら拳を握り締め、一人熱弁するマイクには俺も溜息しか出なかった。
「はいはい、そうですか〜。良かったですね〜」
その熱弁を軽く流すと、マイクは急に俺の隣にドサッと腰を下ろしてきた。
「おい;暑っ苦しいから向こう座れよ」
「いいじゃないかよ、少しくらい。俺だってお前に聞きたいことがたくさんあるんだぞ?」
その言葉にドキッとして「何だよ?」と平然を装って聞いてみる。
「『何だよ?』じゃないだろ?ちゃんのことだよ。俺が一番最初に狙ってた子をお前がすーぐ連れ出しちゃってさ?お前らはあれから何があったんだ?」
「な、何がって言われても…別に何もなかったよ」
「おい、待てよ。何もなかったってことはないだろ?」
俺は「やっぱり来たか」と思いつつ、腰を上げてマイクの前にある椅子に座りなおすと「本当だって」と付け足した。
「じゃあ、あれからすぐに帰ったってことか?どこにも行かずに?ほとんど話もしなかったって?」
「…はぁ…。分かったよ、面倒だから昨日のこと話す。ただし、これ以上しつこく聞いてくるなよな?」
大概このマイクもしつこい男で、気になったことはとことん追求するのが『マイク』だ。
「何だよ〜、何もないなんて嘘つくなよな?俺ほどじゃないけど、お前だって良い感じだったんじゃないか〜w」
「べ、別にこれくらいのこと、何でもないだろ?」
俺はニヤニヤ顔のマイクを睨みながらも昨日のことを思い出して少し顔が火照ってくる。
「まぁ、巷では『女好き』だの『プレイボーイ』だの言われてたお前が、確かに手を握っただけってのは何でもないことなのかもしれないな」
「お、おい!マイクッ!」
「だってそうだろ?1年前のお前なんて、いつも違う女連れてたじゃないか。ま、それがジュリアと付き合うようになってからなくなったと思ってたのにな〜。実はジュリアに二股かけられてたなんて、そりゃショックも大きいわな! いでッ!!」
ガハハと笑っているマイクの頭を思い切り叩くと、相当痛かったのかしかめっ面で「何すんだよ〜」と言いながら頭を摩っていた。
正直、ジュリアのことはまだ傷が癒えてない。
マイクが言うように、俺はジュリアと付き合ってからは彼女しか目に入らないほど彼女を好きだった。
………いや、今思えば本当に好きだったのか?彼女を好きな自分に酔っていたのかもしれない。
しかしそんなことはどうでもいい。
ジュリアは俺以外にも付き合っていた男がいた。
裏切られた…。
その事実だけが俺の心にポッカリ穴を開けたんだ。
そう、ただそれだけ…。
「おいオーランド…お前、本当にまだジュリアのこと忘れてないのか?」
急に真剣な顔つきをしたマイクは、神妙そうに聞いてきた。
「……いや、もう忘れたよ…」
俺は小さく首を振りそう答えるが、こんな返事じゃもちろん「忘れられない」と言っている様なものだ。
「オーランド…俺はお前にこんな思いをさせるためにあいつと会わせたわけじゃなかったんだ…」
「ああ、分かってるよ。何度も聞いたしな」
「でも…―――」
「マイク、ジュリアのことは本当に気にしないでいいから。な?彼女のことは俺自身の責任なんだよ。…そう、全部俺が招いた結果なんだよ」
今までずっと、ジュリアのことは大切に思ってきた…つもりだった。
でも実際は、普段から学校の授業やいつもの仲間で遊びに行くことが多かったのかもしれない。
ジュリアは綺麗でスタイルも良く、お金持ちのお嬢様で少し我がままな所はあったけど、男連中にしてみればそれもまた可愛く思えて、いつもいろんな男から告白されてた。
そんなジュリアと付き合うようになった当初はどんな些細な時間でも彼女に会いに行っていたが、それもいつしかなくなり、「付き合っている」ことが当たり前になってジュリアに寂しい思いをさせていた。
そして最悪の日…
ジュリアが俺の知らない男と仲良く手を繋いでショッピングしているのを見て、体中の血液が煮えくり返るかと思った。
「ジュリア…コイツ誰だ?」
我を忘れてジュリアの腕を掴み上げ、詰め寄ったその瞬間―――
「ッ?!オーリィ?!……あら、私のことなんてもう忘れたのかと思ってたわ?」
「何?」
「私たち、会わなくなってどれくらい経ったと思ってるの?!1ヶ月よ?!1ヶ月ッ!!電話しても出ない…。折り返しの電話もない…。会う約束なんてこれっぽっちもないッ!!毎日毎日、仲間同士で遊びに行って、その間私がオーリィの連絡待ってたなんて微塵も感じなかったんでしょッ?!それなのに今更出てきてなんなのよ!!」
「ッ!!た、確かに少しも会う時間を作れなかったのは謝る。だけど俺は毎日遊んでたわけじゃないだろ?!演技テストがあるって言ってあったじゃないか!電話だって、する余裕があればしてたさ!でも、俺たちはそんな余裕がないほど切羽詰ってたんだ!それなのにテストが終わってみればコレか?そっちこそ一体何なんだよ!」
俺はジュリアの言葉に相当頭にきて、怒鳴り返してしまった。
演技している時の役以外でこんなに誰かに怒鳴ったのは初めてだ。
俺は肩で息をしながら俺を睨みつけているジュリアを睨んだ。
「テストが何よ…。昔のオーリィだったら何が何でも私と会う時間を作ったはずよ?でも、そうしなかったじゃない…!」
「だからそれについては謝っただろ?」
「…今更謝ってもらったって遅いわ…。私、この間からこの人と付き合うことにしたの」
「ッな!!」
「彼はいつも私のことを第一に考えてくれるわ?会いたいって言えばいつでも会いに来てくれる。オーリィとは違ってね…」
俺はこれ以上何も言うことができなかった。
ジュリアの悲しそうに歪んだ顔を見てしまったからだ。
こんな顔をさせたかったわけじゃない…。
こんな思いをさせたかったわけじゃない…。
こんな…こんなことって…
「まあでも、苦い思い出だけどいい経験させてもらったよ!」
俺はポンポンっとマイクの肩を叩きながら少し笑った。
「オーランド…」
「大丈夫だって!ジュリアだけが女じゃないし?もう少し気持ちが落ち着いたら前に進むからさ!」
未だに心配そうなマイクを安心させるように…いや、自分にも言い聞かせるようにニカっと笑いながらそう言うと、やっとマイクの顔にも笑顔が戻ってきた。
「……おう!そうだな!お前はそうでなくっちゃ!」
何だかんだいつもバカ言ってるマイクでも、本当は誰よりも仲間想いで優しいやつなのは知っている。
俺はあえて口にはしないが、マイクには本当にいろんなところで助けてもらってるんだ。
ありがとな…親友!
あとがき
大きく間を開けてのアップでとっても微妙かもしれませんが、今回はオーリィサイドで書いてみました。
ちょこっとオーリィの失恋話(笑)を…と思ったのにちょこっとでは済まなくなり、結局今回は主人公出てきませんでした_| ̄|○ガクッ
今度いつアップできるか分かりませんが、書けるうちに書こうとは思ってますので、気長に待っててくださいw(え?誰も待ってないって?んなバカな…)
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