ドタドタドタ――バンッ
「〜〜〜ッ!!!俺、振られちゃったよ〜!」
「…また?一体何度目よ;」
「またって言うなよ〜!!振られて落ち込んでる大事な幼馴染にそんな事を言うのか?!」
急に私の部屋に入ってきて、今、目の前で泣き喚いている彼、オーランドはれっきとしたハリウッドスターである。
ギルドホール演劇学校の卒業を間近に控えたある日、オーランドは「絶対に不可能」と言われたJ・R
・Rトールキンの物語、『ロードオブザリング』が映画化されるに当たって、レゴラス役として大抜擢
されたのだ。
始めは回りの友人・知人、オーランドの家族までもが信じられず、「また〜、そんな冗談言うんじゃな
いよ」と軽く受け流していたが、何やらオーランドの家にあの映画監督のピータージャクソンが入って
いくのを見たとの証言があり、その噂は瞬く間に一気に町中に広まった。
正式にレゴラスの役を引き受けたオーランドはすぐさまNZへと旅立ち、今ではすっかり各国でも引っ
張りだことなるほどの大忙し振りを発揮している。
この間「来年までオフがないから大変だよ;」などと愚痴を零していたが、オーランドはそれなりに一
生懸命仕事をこなし、着実に演技の実力もつけてきているみたいで、映画を観ているとつい「ドキッ」
とさせられてしまうことが多々あった。
確かに映画の中でのオーランドはそれはもう「幸運の王子様」と呼ばれるだけあって、とてもカッコ良
く見える。
しかし、世の中の女性はオーランドの表の顔だけを見て好きだと叫んでいるが、決してオーランドはカ
ッコ良いだけの男じゃないのは、幼い頃からの幼馴染である私にはよ〜く分かっていることだ。
オーランドに近寄ってくる女性はみんな彼の顔しか見ていない。
だから、結局本当のオーランドを垣間見た女性たちは半年と持たないで振ってしまうのだ。
原因は少なからず私にもあるのだけれど…
「…それで?今回もやっぱり私のせい?」
そう聞くと、オーランドはうな垂れていた顔をバッと上げ、涙で濡れた瞳で私を見つめてきた。
「別に…のせいじゃないよ…。ただ今回の彼女も俺とが仲良くしてるのが気に入らなかっ
たみたいなんだ。『折角のオフをどうして私と過ごさないで幼馴染とばっかり過ごすのよ!』って言わ
れてさ…。俺は彼女だって女優なんだから忙しいかな?と思って連絡しなかったし、彼女からだってあ
んまり連絡来なかったのに、どうして俺ばっかり責められなきゃいけないんだよ…」
オーランドはソファーに置いてあった私のお気に入りのパウダービーズのクッションを膝に抱え、抱き
締めながら体育座りをしている。
確かにオーランドは幼馴染である私に幼い時からべったりで、今でも仕事の休みがお互い合うと、買い
物に行ったり遊びに行ったりと、オーランドの恋人に悪い事をしてるな…と思いつつも、恋人同士がす
るデートのようなものを何回もしていた。
そして私は毎回の如く「恋人を誘えば良いじゃない」「そんなんじゃ振られるよ?」などと注意をして
きたが、その度に「だってと一緒の買い物の方が気が楽なんだもん♪」「俺と一緒じゃ嫌なの?
」なんて言われたら、密かにオーランドの事を想っている私が断れるはずもない。
結局オーランドは私が原因で毎回数ヶ月で振られてくるのだ。
「…だからあれだけ言ってたじゃない;私の事は放っておいて良いから彼女のところに行っておいでっ
て。なのにオーリィったら結局私と出掛ける方を優先するから毎回同じ理由で振られるのよ?誰だって
自分の恋人が自分とのデートより幼馴染を優先されたら怒るって;しかも幼馴染が男だったらまだしも
、私女だし;そんなに泣くほど好きだったならもっとマメになることね!」
ったく、好きな相手に「恋人に振られた!」って泣きつかれる私の身にもなってよね!
毎回毎回、私がどんな気持ちでいるかなんて、このオーランドにはわからないんだわ!
「そんな冷たいこと言わないでよ〜ッ!!それに、どっちかというと泣くほど好きだったんじゃなくて、振られたことがショックなんだよ…(泣)」
「だーかーら!!何度も言うように―――」
「の方が誰よりも大事だから仕方ないだろ?!」
「ッ!!―――…へ?」
ちょっとちょっと…今ものすっごく嬉しいこと言ってくれた気がするのは私だけ?
そんな潤んだ瞳でしかも上目遣いで私を見ないでッ!!
いくら私が女だからって、理性ってもんがあるのよ?!
「俺にとってだけは特別な女の子だから…だから振られるのはショックだけど、それでもを手放したくないんだ…」
ヤバイ…
これはヤバイ…
もう駄目だ…
私は立ち上がってオーリィの前に立つと、理性がぶっ飛んだ。
「…オーリィ…ゴメン…。私はオーリィが思っているような女の子じゃないの。今の幼馴染の関係が壊れてしまっても……私はずっとずと貴方が好きだったの」
私はソファに座っていたオーリィの肩に手を置いて、そのままゆっくりとキスをした。
今まで培ってきたオーリィへの全ての想いを込めて…。
一瞬オーリィの肩に力が入ったのが分かり、私はゆっくりと唇を離した。
「………う、嘘だろ…?」
今、私の目の前にいるオーリィは、言葉が出ないほどビックリした顔をしてる。
そりゃそうだろう…
だって、生まれたときからずっと一緒だった…
そんな兄妹のような関係だった私が、実は自分のことを『異性』として意識していたなんて…
ショックに違いないだろう。
「…………今の、本当…?」
オーリィは私のクッションを横に置き、オーリィを見つめて立ち尽くしている私を見上げてきた。
「信じてもらえないのも無理はないわよね…。だって今までそんな素振りは一度だってしてこなかったもの。でもね…私はずっと……10歳の頃、私がクラスの男の子に苛められて泣いて帰ってきたときあったでしょ?その時に自分のことのように怒ったオーリィが、その男の子たちに仕返しに行ってくれた時からずっと…私はオーリィだけを見てきたわ」
幼い頃の私は「日本人」と言うだけで苛めの対象になっていた。
しかし、自分が苛められてるなんて誰にも知られたくなかった私でも、涙を堪えきれずに部屋で泣いたところに、オーリィがやってきて詰め寄られた時は本当にビックリした。
幼心に「頼りになる」「かっこいい」などと思ってしまい、次の日学校へ行ってみると、私を苛めていた男の子たちがみんなで謝ってくれた。
でも、それからが大変で、私は必死に自分の気持ちを隠し通してきた。
初めは「恥ずかしいから」と隠していたのが、年を重ねるうちに「この関係を壊したくないから」に変わっていて今に至る。
でも、こんな10年以上もひたすら隠してきたのに、まさかこんな形で私たちの関係にピリオドを打つとは思いもよらなかった。
「…ごめんね?迷惑だったよね…。オーリィ…ごめ…ね?ごめん…。ひっく…ごめん…なさい…」
私は、不安と後悔の念に駆られ、涙が溢れ出てきた。
止めようと頑張っても、逆に止めどなく溢れ出てくる涙を手の甲で拭う。
「…、顔に傷が出来ちゃうよ?」
すっと立ち上がったオーリィは私の手を止めると、手の甲に付いている涙にゆくりと口付けた。
「え…ッ?ちょ、オー…リィ?!」
手を引っ込めようとしても、がっちりと捕まっていて動かない。
そしてオーリィは私の手を離すと今度は両手で私の頬を包み、瞳、頬、口元と、順に唇で涙を吸い取っていく。
私はビックリしたのと、大好きなオーリィの顔が近くにあるのとで、堅く目を閉じた。
すると「クス」という笑い声が聞こえ、恐る恐る目を開いたその瞬間に私の額とオーリィの額が合わさった。
「オ、オーリィ…?」
「俺、嬉しいよ。が俺と同じように想っていてくれてたんだって分かって…。すっごい嬉しい!はなかなか気づいてくれなかったから、半分諦めてたんだけど…まさか告白してくれるとは思わなかったよ」
「え…?ど、どういうこと…?え?えぇ?!」
頭が混乱している私は、オーリィの言葉がちゃんと頭に入るまでに多くの時間がかかった。
「実は俺の方がより前からのこと好きだったんだよ?」
「…嘘…?いつから…?」
私は恐る恐る聞いてみると、私の顔は茹蛸のように真っ赤になった。
だって…反則だよ…
『俺が2歳の時、が生まれた瞬間に恋に落ちたんだ』
そんなこと言われたら、めちゃくちゃ愛しくなっちゃうじゃない?
この後、もちろんオーリィからは「振られた」と言う言葉は発せられなかったのは言うまでもないだろう。
しかし…
「ねぇ〜、!折角恋人同士になったんだからもっとイチャイチャしようよ〜」
「い・や!」
「何で〜?」
「何でも!…だー!!もうッ!暑っ苦しいから抱きつかないでって言ってるじゃない!」
私の部屋からはこんな会話がしょっちゅう聞こえている。
だって…恥ずかしくて照れちゃうんだもん。
そして私たちの仲が深まるのはもっともっと先の話。。。
あとがき
うー…あー…えー…(早く喋れ)
オーリィファンの方々に本当に申し訳ないですね;
最近忙しくて小説を書いてませんでしたが、なかなかうまく行かず、その結果がこれです。
ここんところ管理人の脳細胞はどんどん磨り減っていってる気がします;
やばいなぁ…。
小説読んでて「こいつ何が言いたいの?」って思ったら迷わずBBSにでもカキコしてみてください。
では、お疲れ気味の日浦華蘭でした〜☆
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