「「〜!!」」
私の名前を呼ぶ二つの声と共に背中に衝撃が走り、思いっきり顔面から落ちそうになった。
「きゃあ!!」
「おっと、危ない!」
そう言って咄嗟に支えてくれたのは綺麗な金髪のエルフ、闇の森の王子のレゴラスだった。
「レゴラス、ありがと;―――ちょっとメリー、ピピン!!後ろから抱きつかないでっていつも言ってるじゃない!」
いつも私にこんなことする奴らはホビッツの中でもメリーとピピンだった。
「アハハハハ!!だってってば、怒った顔も可愛いんだもん」
「そうそう!こ〜んな顔してさ♪」
そう言ってピピンが私の真似なのか、指で両目の端を吊り上げ、メリーがその後ろからピピンの頭に指で角を表した。
「…」
「「そろそろかな?」」
メリピピはニヤニヤしながら、俯いてる私の顔を覗き込んでくる。
そしてそれが合図となった。
「あら、私はそんな顔しないわよ?」
極上の微笑みを向けて二人の耳を引っ張った。
「「い、痛い痛い!!」」
二人の想像していた私の行動とは違った極上の微笑みに騙され、二人は顔をしかめながら訴えてきた。
「いっつもいっつもちょっかいばかり!!どうして私ばっかり…」
耳を引っ張っている指の力を緩め、二人を解放した。
そして私は今にも泣き出しそうな顔を作った。
「?!」
「ゴ、ゴメン!違うんだよ!僕たちはただ、と遊びたくって!」
「そうそう!メリーの言うとおりだよ!だから泣かないで!」
今まで私をからかっていた二人は、今度は必死になって謝り弁解してきた。
「アハハ!うっそだよ〜ん♪二人ともビックリした?」
私は笑いながらアッカンベ〜と舌を出した。
そして私が走り出すと、二人は一瞬ポカンとした表情をして状況が把握できると少し怒りながら、でも笑顔で追いかけてきた。
「「〜!!」」
「こっこまでおいで〜―――――ッうわ!!」
後ろ向きで舌を出しながら走っていると、何かにつまずいて派手に後ろ向きで転んでしまった。
「ッつー…イテテテ。今のは何?」
よいしょと腰をさすりながら体を起こすと、何と!サムが横たわっていた…。
「サ、サム?!ゴメン!!マジごめん!!本当にゴメン!!もしかしなくても私ったら、サムにつまずいて転んだってことでしょ?この状況…;」
埃を払いながら立ち上がったサムに、私は目の前で両手をパンッと合わせ、謝り倒した。
「ちょっとビックリして痛かったけど、大丈夫です。さんこそ怪我はありませんか?」
そう言って自分の身より、私を気遣ってくれる優しさが心に染みた。
「サム…。サムって本当に優しいのね。サムといると本当に落ち着くわ。まさに癒し系ね。動物に例えたら…こぶ…子犬って感じ♪」(危ない危ない;こぶたって言う所だった;)
その後のサムはとても落ち込んでいたという…(えー、何でー?褒めたのに…)
「ねぇ、。ちょっといいかな?」
声をかけてきたのは指輪保持者であるホビットのフロドだった。
「あ、フロド!ねぇねぇ、メリピピってあれ怒られてるの?」
そうなのだ。
さっきまで私を追い掛け回していたメリーとピピンは何故だかガンダルフにすっごい剣幕で怒られているのを目の端で捕らえ、思わず声をかけてきたフロドに聞いた。
「…あぁ、うん。にあんまりちょっかい出すなって怒られてるみたいよ?
」
などと平然と言ってのけるフロド。
二人が怒られてるのって私のせいか!!と、少々哀れに思いながらも、助けることなんてしないのがわ・た・しw
「アハハ;そ、それで?私に用があったんでしょ?何?」
「うん…あのさ…えっと…」
なかなか話を切り出さないフロド。
何か怪しい…。
「はさ…、誰か…好きな人って…いる?」
「…へ?」
何を唐突にそんな質問!!と思ったが、実際好きな人がいる私の顔は自分でも分かるくらい真っ赤になっていった。
「…やっぱりいるんだ。そっか。そうだよね…。」
「いいいいい、いないよ!!なな、何で?!」
首を思いっきり横に振って否定するが、説得力がない;
「が僕のこと好きになってくれたらよかったのに…って思っただけ…」
そう言ってフロドはしょぼんとうな垂れ、私から離れていく。
「フロド??ちょ、ちょっと??」
私にはフロドの声が小さすぎて何を言っているのかが分からなかった。
フロドは私の呼びかけにも反応を示さず、ちょっと離れたところにいるギムリの側にちょこんと座っている。
「最後何て言ってたんだろう…?」
フロドの様子をみて、聞くに聞けない状態になってしまった。
ま、今度聞こう!と思い、何となく人を探す。
仲間から離れたところに腰を下ろしていたボロミアが目に入り、私もボロミアの隣に腰を下ろした。
「ねえ、ボロミア」
「ん?」
「こうやっていつ死ぬかも分からない旅に出て、後悔してる?」
さりげなくボロミアに聞いた。
でも、彼から返ってくる返事なんてすぐに想像できる。
彼は自国の為、民の為なら命をも捨てる覚悟だと分かっている。
後悔なんてしてるわけがない。
「いや、俺は後悔など全くしていない」
思ったとおりの答えが返ってきた。
「大事な仲間に巡り合えたし、大切にしたいと思える人もいる」
「え?」
(…今、何か言った?この人。大切にしたいと思える人?って誰?私ってば想い伝えずに失恋?!神様!そんなのってヒドイじゃないですか><!!私だって今まで想いを表に出さないように必死で頑張ってきたのに!!ボロミアの大切にしたいと思える人って一体誰なのさ!)
考えれば考える程頭が混乱し、想えば想う程ショックで涙が溢れ出てくる。
「?!お、おい、どうして泣くんだ?」
理由なんて言える分けない。
大好きなボロミアの重荷にはなりたくない。
しかし、涙を止めようとすればするほど嗚咽がもれ、涙は後から後から溢れ出てくる。
必死に首を横に振るが、そんなもの無意味なものでしかない。
「、答えてくれ。俺が何か言ったのか?だとしたらすまない…;」
違う!と言いたい。
ボロミアのせいなんかではないと言いたいのに…。
「くそッ!!頼む、もう涙を流さないでくれ…。俺が狂ってしまう」
そう言ってボロミアはいきなり私を抱きしめた。
それはもう、力いっぱい。
ビックリして一瞬にして涙は止まり、この状況を把握するべく頭をフル回転させた。
「…ボロ…ミア…?ボロミア…。ボロミアッ、苦しい…!!」
ボロミアの胸をドンドンと叩くとやっと気がついたのか、慌てて私を離した。
「ッ!!悪いっ!!何か、の泣いている姿を見たらつい…。すまなかった
」
ボロミアはこんなはずでは…と思ったのか、顔を手で覆っていた。
私はまた重荷になってしまった…。
「ごめんね…、ボロミア。アハハ、何か私…情緒不安定みたい…;ほんと、ゴメン!」
そう言って立ち去ろうとした私の腕を、ボロミアが捕まえた。
「…。こんなところで言うつもりじゃなかったけど…好きなんだ…」
ボロミアの突然の告白。
しかし先程大切にしたいと思える人がいるて言ってたじゃない…?その人は?そう思っていたのが顔に出ていたのか、ボロミアは間髪いれずに続けた。
「さっき言ってた大切な人は…、君なんだ。ずっと言いたくて…言えなかった。怖かったんだ…。言ってしまったらみんなに向けてるような笑顔をもう二度と、俺に見せてくれないんじゃないかって。だったら今のままのほうが充分幸せなんじゃないかって…」
「ボロミア…」
ずっと好きだと思っていたボロミアに告白された…。
ボロミアも同じことを思っていてくれたんだ。
私もずっと怖かった。
ボロミアに避けられたりするならこのままの方が…ずっと思っていたことだった。
「私もね、好きよ?ずっとずっと好きだった。二人して怖がって、前に進めてなかったんだね」
「?!ほ、本当か?!夢じゃないのか?!」
ボロミアは私をちゃんと正面に向かせ、肩を握った。
少し痛かったが嬉しい痛み。
私はそのまま体をボロミアの胸に預けた。
ボロミアは始めは恐々だったが、しっかりと抱きしめてくれた。
「ゴンドールに戻ったら、必ず俺がゴンドールを案内するから。父や弟にも自慢してやろう。いや、ゴンドールの民、全員にお前を自慢して歩いてもいい」
「それは勘弁だわ(笑)」
クスクスっと笑うと、ボロミアは私の顎を持ち、上に向かせた。
「それほど今、俺は幸せだということだ」
そう言ってどちらともなく唇を合わせた。
その瞬間の少し離れていたところから見ていた連中。
メリー:「おーい;はボロミアだったのかよー;」
ピピン:「僕ら(ホビッツ)のうちの誰かかと思ったのに…(泣)」
フロド:「僕は気がついていたよ;でも、こうも見せ付けられるとやっぱりショック…;」
サム:「おらは子犬扱いでしたからね;;;」
レゴラス:「僕もが好きだったんですけどね…ボロミアから奪って来ようか…」
アラゴルン:「レゴラス、お前が言うとシャレにならないからやめておけ;」
END
あとがき
えー…今回は随分前に友人「ちゃちゃ丸」に差し上げた「ホビッツに囲まれ隊」という要望で書いたものをアップしました。
私の都合でボロミアとくっつけたくて…(照)
いやいや、しかし!ホビッツ夢は難しい;小さい人たちは専門外なんで、どうなることかと思いましたが、何とかまとまって良かった?
今後ホビッツ夢は書く予定はありませんので結構駄作だけどレアですよ(笑)
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