「ハルディアーーーッ!!!」
目の前で最愛の恋人が死んだ。私の危険を察知した彼が、一瞬だけ油断したその隙をつかれた…。
私が…私がいなければ…
ヘルム峡谷の戦いは、ガンダルフがローハンの騎士を連れ戻ってきたお陰で勝利することが出来た。
この勝利で得たものは少なく、無くしたものの方が断然多かった。死傷者は数え切れないほど多く、エルフも残った人数は極僅か。
その中にはロスロリアン警備隊長を勤めていたハルディアの最愛の恋人である、の姿があった。
「…ハル…ディア……?」
「…」
の問いかけに答えはなく、ハルディアは恋人であるの目の前で倒れていた。
「…ねぇ、ハルディア…?勝ったのよ?私たち、サウロンの軍勢に勝ったのよ?」
「…」
もう、起きることのない恋人の手を取り、は頬に当てた。
「何故…?何故目を覚ましてくれないの?」
いつの間にかの瞳からはポロポロと涙が零れ落ちていた。
「私が無理矢理ついて来たから怒ってるの?」
「…」
はハルディアの綺麗な銀色の髪を撫でた。すると、涙がハルディアの頬に零れる。
「私、涙を流したことなんて今までなかったわ……ねぇ、ハルディア…お願いだから目を開けて…」
そのまま崩れるようにハルディアを抱きしめた。
「お願い…お願いよ…。目を開けて。私と…約…束…したじゃ…ない。一緒にロリアンへ帰ろうって…愛してるって……もう一度言ってよッ…お願い…」
ハルディアの死を信じることができないは、悲しみによって彼の隣で一緒に眠ろうと体を倒した。
「ッ!!」
ハルディアとは違う声に呼ばれ目を開けると、アラゴルンが走り寄って来た。
「!悲しみに身を任せてはいけない!!ハルディアはを助けようとしたんだ。彼が命を懸けて救った命を無駄にするな!」
アラゴルンは必死になってを抱き起こした。
「ハルディアがいないこの世界で、生きていても仕方がないの…」
パシンッという音が辺りに響き渡った。
「ッ!」
「貴女はハルディアを裏切るのか?!」
「…え?」
左頬がジンジンと痛むのを感じたは、やっとアラゴルンの言葉を耳にした。
「今貴女がやろうとしていることは、ハルディアを裏切るということだ」
「…じゃあ…私はどうしたらいいのッ?!ハルディアを亡くしてどうやって生きていけばッ!!」
「。貴女はハルディアの分まで一生懸命生きればそれでいい。愛し続けてあげればいいんです」
はハルディアに視線を向け、そっとハルディアの顔を、頬を撫でた。
「ハルディア、本当にそれが…ハルディアの望んでいること…?」
は迷っていた。自分が生きることが彼の望みなのか?自分も本当は一緒に行くべきじゃないのか?しかし、アラゴルンの言葉によっての決意は固まった。
「ハルディアを悲しませないでほしい。貴女が死ぬということはハルディアを悲しませることだから」
「…ハルディア…私、ハルディアが命を懸けて守ってくれたこの命を、大切にするわ…」
「…」
「ハルディア…愛してる」
はそっとハルディアの唇に、最後の口付けをした。
「私、ロリアンへ帰ります。それが一番…」
は突然口元を押さえ、少し離れたところへしゃがみこんだ。
「ッ?!」
アラゴルンはの突然の不可解な行動に、恐る恐る近寄った。すると、カランはアラゴルンに向き直り突然また涙を流した。
「アラゴルン…私…お腹にハルディアの子が…」
「なっ?!まさか…本当に?!」
驚くアラゴルンにはお腹に両手を添えて頷いた。
「きっと…ハルディアが最後にくれた私へのプレゼントだわ…」
はハルディアの元へ戻り腰を下ろし、ハルディアの手をお腹に当てた。
「ハルディア、分かる?この子は貴方と私の大事な宝物。私が大切に育てるからね?」
生きる希望を取り戻したは、ハルディアと最後の約束をし、遺体を丁寧に弔った後、ロリアンへと戻っていった。
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あとがき
TTTを見てハルディア夢が無性に書きたくなり、1時間で完成させたため、このようなものになってしまいました;最初は書きながら泣いてました(おい;)
だってだって、ハルディアめっちゃ可哀想なんだもん><!!
自己満でスイマセン;
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