昨日から新しく野犬のが旅に参加し今日も青空の下、指輪を葬る旅の仲間は大地を歩いていた。
先頭には魔法使いのガンダルフ。
ガンダルフの後ろには闇の森の王子であるエルフのレゴラス。
レゴラスの後ろにはエルフの谷『裂け谷』で3000年眠り続け、サウロンの復活を阻止するために目覚めたと、そのに助けられた大型の野犬である。
の後ろにはドワーフで、斧をがっちりと構えているギムリ。
ギムリの後ろにはフロド、メリー、ピピンにサム。
ホビッツの後ろにはゴンドールの執政の息子であるボロミア。
そして最後尾は野伏であり、イシルドゥアの末裔であるアラゴルンである。
「、足は大丈夫?」
私の問いかけに答えるようには走り出し、縦になっている仲間の列の周りを一周してまた、私の隣に戻ってきた。
「アハハ。元気になったんだね!良かった〜。この旅が終わったらたくさん遊ぼうね♪」
そう言うと、は嬉しいのかパタパタと大きな尻尾を振った。
「おい、!こいつのこの尻尾どうにかしてくれ!俺の脇腹を何度も叩きやがる…」
ギムリがムスッとしながら鬱陶しそうにの尻尾を払いのけて言った。
「ギムリ、ゴメン!ほら、はもっと前を歩いて!皆に迷惑はかけちゃダメだよ?」
私はの頭を撫でながら私の前にを招いた。
「ねぇ、メリー。はずっとに引っ付きっぱなしだよね…」
「ピピン、…君も同じ事思っていたのか。ちょっと…邪魔だね」
「うんうん。僕らが話しかけられないくらいだもんね。もさ。ずっとばっかり…」
メリーとピピンはやけにこっそりと喋っているのが気にはなったが、私達一行は歩き続け、ようやくガンダルフの「休憩」の合図が出た。
そこはゴツゴツした大きな岩がたくさんあり、が岩陰でゆったり出来るほどの大きさだった。
サムが作った料理を食べ終え少し休憩していると、メリーとピピンがボロミアに剣の指導をしてもらっていた。
「そうだ、その調子!」
ボロミアはピピンと軽く剣を交える。
そしてパイプ草を吸いながらそれを見ていたアラゴルンも細かく注意する。
とても危険な旅をしている最中だとは思えないほど、時は穏やかに進んでいた。
ギムリは何やらガンダルフにぶつくさ意見をぶつけ、レゴラスはこんな時でも油断せずに辺りを見回している。
私ともアラゴルンの横でボロミアたちを見ていた。
「うわぁ!!」
「済まん!」
ボロミアの剣が当たったのか、ピピンは手を押さえながら顔を顰め、ボロミアに蹴りを入れた。
そして間髪入れずにメリーに剣で膝かっくんされ、ボロミアの体勢は見事に崩れ、極め付けにはホビットコンビに襲われていた。
「アハハハハ!!やれやれ〜!!」
私が野次を飛ばすと、アラゴルンに止められた。
「、あんまり煽るんじゃない。さ、メリーとピピンも―――ウワッ!!」
ボロミアから引き剥がそうとしたアラゴルンは、逆に足元を掬われ見事転倒した。
「ッ!…ぷッ!アッハハハハハハ!!大の男性二人がホビッツによって倒されちゃったわ♪アハハハハハ!あー、もう!おなか痛い!!」
旅に出てから初めて本気で笑った。
辺りは穏やかなムードが流れていた。
この瞬間がいつまでもずっと続けばいいのに…。
「あれは?」
突然顔を顰めて遠くを見ながらサムが呟いた。
「ただの雲だよ」
ギムリは曖昧に返事をする。
「え?あれって…雲?でも何か…―――」
「すごい速さだ…逆風なのに」
先の言葉をボロミアに言われ、オイッとツッコミを入れたくなった。
すると、とても視力に優れているエルフのレゴラスが叫んだ。
「クレバインだ!!」
「隠れろ!」
アラゴルンの言葉に仲間全員が岩陰に隠れる形になった。
「うわッーー!!」
隠れようとした瞬間に私の体はお腹から持っていかれ、岩陰に押し倒された。
その犯人はこの旅のサブリーダーであるアラゴルン。
「ちょっとアラゴルンどいて!!!おいで!!」
助けてもらったお礼もそっちのけでを呼ぶと、この状況を理解しているのかは自分がいた大きな岩の下に一人で隠れた。
そしてその数秒後には真っ黒な鳥が数十羽という数で押し寄せてきた。
私たちが休憩していた岩の上を2〜3度旋回して、クレバインは遠ざかっていく。
クレバインが通り過ぎるのを確認した旅の一行は次々と岩陰から這い出てきた。
「サルマンのスパイじゃ。南へ行くのは危険だ。…カラズラスの峠へ…!」
ガンダルフは、サルマンの放ったオークなどが南にいると判断し、その場で一番安全であろうと見た広大な雪山を見上げて言った。
「えー?!あれ登るの?!」
「僕たち埋まっちゃうよー><!!」
などとメリーとピピンが必死になって訴え、ギムリもドワーフが作った地下都市であるモリアから行こうと、ガンダルフに食い下がっていたが、やはり何度言ってもガンダルフは首を縦に振らなかった。
旅の一行はとても深く積もった深雪の中を、縦一列になって突き進んでいた。
この隊列は小さな人と呼ばれるホビットの為のもので、雪に埋もれてしまうのを何とか防いであげようとと、他の者が先に進んで雪を掻き分けてあげていた。
は何故か雪が大好きだったみたいで、ガンダルフよりも前の先頭で嬉しそうに雪を掻き分けながら歩いているため、私もその犠牲となり、とガンダルフに挟まれた所を歩いていた。
時々が道を反れるため、の司令塔として私が常にの側にいる。
必死で歩いているそんな時、アラゴルンの大きな声が聞こえた。
「ボロミア!!」
何かあったのかと思い、私も足を止め振り返る。
ボロミアは何かを持っていたのか、フロドに近づいた。
フロドはそれを奪うように受け取るその瞬間、私は見てしまった…。
ボロミアが渡したモノは「指輪」だった。
ボロミアはフロドの頭をクシャっと撫でて列に戻ってきた。
私は胸を撫で下ろしてガンダルフを見る。
「ねぇ、ガンダルフ。ボロミアが指輪と戦ってるの知ってる?」
ガンダルフは少し困ったような顔をして頷いた。
「私じゃ…力になれないかな…。ボロミアの気を紛らわすことって…出来ないかな?」
私はこの旅に出て、ボロミアにいろいろ手助けしてもらっている。
そんな優しいボロミアに指輪の誘惑に負けてほしくなかった。
「ふむ…、それはお主が考えて決めることじゃ。わしらはに強制は出来ん」
そう言ってガンダルフはまた歩き出した。
「…私に出来ること…。あ!!ガンダルフ、ガンダルフ!!あのね、お願いがあるんだけど…」
私に一つの提案が思い浮かんだ。
「なんじゃ?」
「えっと…を見ててほしいなぁ…なんて思ったりするんだけど☆」
私の言葉にガンダルフは疑問符を浮かべていたが、どういう意味か分かってくれたらしく快くOKしてくれた。
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