「ロヒア!ラダン!今日も剣の相手してくれない??」



ここのところ毎日のようにエルロンド卿の双子の息子、エルロヒアとエルラダンに剣の相手をしてくれ
るようにと、おねだりをするの姿が見られた。



〜、どんなに剣を交えたって、僕たちはもう君には勝てないんだよ;」



「そうそう;は強すぎるんだ」



本を読み終えた私に、エルロンド卿は剣を一つ与えてくれたのだ。



それはとても綺麗な細工が施されており、柄の部分にエルフ語で私の名前と、緑葉が描かれていた。

刃は人間業ではなく、エルフが作った剣と言うだけあって、綺麗に研ぎ澄まされていた。

重さもちょうど良く、とても持っていて違和感がない。



「そなたの為に作らせた最高級に仕上げられている剣だ。使うと良い」

そう言って何の躊躇いもなく渡された剣。



「ありがとうございます!!」



形だけは丁寧に受け取りつつも、早くその剣を使いたくて仕方がなかった。


練習相手をしてくれそうな人を探しに館から出ると、ちょうどオーク狩りから帰ってきたエルロンド卿
の双子の息子が見受けられた。



今までずっと部屋に引き篭もっていたこともあり、2・3度しか喋ったことがなかったが、思い切って
二人の元へ駆けつけた。













「あ、あのッ!」



なんて切り出してよいのか分からず、それでも二人を引き止める。



「ん?あぁ!じゃないか!」



「どうしたんだい?そんなに慌てて」



二人はの姿を見るなり、立ち止まり優しい笑顔になった。



「あの、お二人にお願いがありまして…」



「「お願い?何?」」



「(ハモってるよ…)先ほどエルロンド卿よりこの剣を頂きました。でも、剣の相手をしてくださる方
がいないのです。今日は疲れていらっしゃるでしょうから結構なんですが明日、私の剣の相手をしてく
ださらないでしょうか?」



ダメもとで頼んでいるため、少し控えめにお願いしてみる。



「…の剣の相手かぁ。じゃ、一つ条件があるんだけど、それがのめたらいいよ♪」



エルラダンが悪戯っ子の笑みを浮かべ条件とやらを出してくる。



「…条件…ですか??」



「ラダン…何を言う気だい?」



エルロヒアも少し心配そうに様子を伺っている。



「何、簡単なことだよ。が僕たちと喋るときの敬語を止めてくれればいいんだから♪」



「あぁ!それいいね!僕たちはと友達になりたかったからちょうどいい条件だ♪」



双子はニコニコしながらそんな事を言ってきた。しかし、は簡単に「うん」とは言えなかった。



「…え?しかしそれは…;」



一応自分よりも年上で、何よりここの領主の息子に敬語を使わずに喋るなんてできない。



「「普通に喋ってくれなきゃ剣の相手してあげな〜い」」



な〜いって…;しかも二人そろって同じ言葉を…;は思わず噴出してしまった。



「…プッ…アハハハハハ!!!二人して同じ言葉を同じように…アハハハハ!!」



お腹を抱えて笑っているを見て、双子も笑い出した。



「ハハハハハ。僕らそんなに面白いこと言ったかな?」



「アハハハハ。いや、僕には分からなかったけど、が笑ってるから何か楽しくなっちゃった」



そうしてひとしきり笑った後、が急に二人に剣を突き出してきた。



「「ッ!!」」



「(ニヤリ)エルラダン、エルロヒア、練習相手ヨロシクね!!」



そう言っては二人に背を向けて館の中へと消えていった。















次の日からの練習が始まり、二人は最初こそ互角といえたが、みるみる感覚が良くなっていくカ
ランに、4日経つとすでに勝つことができなくなっていた。



、今日は私とお茶でもいかが?」



の誘いに渋っている兄を差し置いて二人の妹であるアルウェンがやってきた。



「アルウェン!!」



が目覚めてから何かと世話をしてくれるアルウェンにはとても懐いていた。



アルウェンはエルフの中でもとても美しく聡明で、しかしとても気さくで優しい女性だった。

彼女に会った人は皆虜になってしまいそうな魅力的な人で、周りのエルフからは夕星姫と呼ばれるほど
素敵な女性だった。



「たまには私とも遊んで欲しいのよ。いつもはお兄様と剣の練習しているから…」

と、悲しげな顔をしてみせる。




「ア、アルウェン?!私、行きますよ?!アルウェンとお茶したいです!!」



アルウェンの小芝居に気がつかずオロオロする。するとアルウェンは極上の微笑をに向け
、兄たちを置き去りにして自室へとを連れ去った。



「ねぇ、。お兄様たちに剣の相手させるために良いこと教えて上げましょうか?」



「え?!何か方法があるんですか?!」



飛びつきそうな勢いでその方法を聞こうとするに、少し意地悪そうな笑みを浮かべながら耳打ち
した。



「え?そんなんであの二人は剣の相手をしてくれるんですか?」



「えぇ、きっとしてくれると思うわw」



そうして二人の笑い声は夕食まで続いた。













次の日、はエルラダンとエルロヒアの部屋の前に来ていた。そしてドアをノックすると、エルロ
ヒアがドアから顔を出した。



「やぁ、!おはよう。昨日はアルウェンとかなり盛り上がっていたみたいだね♪」



「エルロヒア!おはよう!そうなんだ。アルウェンったら本当に面白くって…」



「おはよう、!」



今度はエルラダンが顔を出してきた。



「あ、エルラダン!おはよう♪そうだ!あのね、今日も剣の相手してもらいたくてここに来たんだ♪」



「「………」」



笑顔が一瞬で固まる二人を見て、は肩を落とした。



「…そっか。もう嫌になったんだね…」



そう言ってが泣きそうな表情をすると、今度は二人同時に慌てふためいた。



「い、いや、別に嫌だっていってるわけじゃないんだよ!」



「そうそう、僕らはに勝てないからって…」



一生懸命弁解する二人を見上げ、は昨日アルウェンに教えてもらった言葉を口にした。



「二人にしか頼れないの…。どうしても…ダメ?」



「「ッッ!!!!」」




上目遣いで二人を見上げ、こんな言葉を言われて無下に断ることができないのをアルウェンは知ってい
たのだ。



「…もういいや…。ゴメンね?無理言って」



そう言って部屋から立ち去ろうとしたの腕を両脇から二人にむんずと掴まれた。



「え?!ちょ、ちょっと待って!!」



二人の急な行動にビックリしたは目を丸くさせ、二人を止めた。



「「さぁ!、剣の練習をしよう!!」」



(おいおい、アルウェンの言葉どおり本当に効いちゃったよ)と思いつつ、顔には満面の微笑を浮かべ
て、その日の練習もの圧勝で終わった。









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