、絶対ここに帰ってくるって約束だよ?!僕のこと…忘れないでね!」

「…レゴ…ラス…ひっく。絶対に…かえってくる…から…大人になったら…帰ってくるから…」

私がまだ小さい頃、闇の森で生まれ、大人になるまでの間はスランドゥイル様とロスロリアンのガラ
ドリエル様のご好意によってロスロリアンで過ごすことになった。

それまでの間、毎日のように闇の森を駆け回って弓や剣の練習をしていた。

闇の森の小さな王子、レゴラスと共に…。





「うわー!闇の森…久しぶりだわwロリアンも神秘的で素敵だったけどやっぱり我が家が一番って気が
しちゃう♪お父様もお母様も元気かしら…。さ、シャル!もう少しよ。頑張って!」


「ブルルルル」


先日やっと成人することが出来たため、私は闇の森へ帰る事を許された。


この日をどれだけ夢見てきたことか…。


「お父様!お母様!!」



ロリアンから護衛のため2人ほどついてきた人たちも闇の森に到着する前にさっさと帰してしまったの
で、私は単身で我が家へと帰った。


「まぁま!!美しく立派になって…」

2000年以上会っていなかったお母様は私の姿を見るなり、涙を流しながら抱きしめてくれた。

「おぉ!か!無事に帰ってきて何よりだ!!さぁさ、家に入って休むといい。今日はお前が帰っ
てくると言って闇の森中で祝ってくれるそうだ!」

お父様は顔を高揚させて、お母様ごと私を抱きしめる。

「そうね、さぁ、疲れたでしょ?入って入って」

とても久しぶりな故郷。


とても久しぶりな我が家。


そして…とっても久しぶりに会った両親。

自分の落ち着ける場所はやっぱりここしかないと思い直させてくれる地だった。


「そう言えば…―――お父様、お母様。私ちょっと出てきます!」

家に足を踏み入れようとした瞬間に思い出した約束…。

彼がいるかどうかは分からない。

でも…約束の地へ向かわなければ…


「「?!」」

両親と対面したばかりだというのにすぐに側を離れてしまう私を許してください…。







「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。やっぱり全然動いてなかったから体力が落ちてるわ;はぁ〜、えっと…確
か約束したのはこの辺だった気が…」


建物が立ち並んでいる場所からほんの少し離れた場所。

そこが私たち二人のひみつの場所であり、約束の場所でもある。

「君が探してるのは僕でしょ?」

突然どこからか声が聞こえて辺りを見回すが、どこにも姿が見当たらない。

「え?…どこ?」

声は確かに近くで聞こえたはずなのに。

「クスクス。ほら、ここだよ!上を見てごらん」

言われたとおり、声の主を見つけようと上を向いた瞬間…そう、一瞬にしてこの世の時が止まったかの
ように思われた。

私とは違い、とても綺麗な金色の髪。

とてもスランドゥイル様に似た顔立ち。

とても美しいエルフがそこにいた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


僕がまだ小さい頃に毎日のように遊んでいた女の子がいた。

しかし突然、彼女はロスロリアンへ行かなければいけないと言って、僕たちは離れ離れにならざるを得
なかったのだ…。

彼女は涙を流しながら「必ず帰ってくる」と言って去っていった。

僕はその日から毎日、ここへ訪れるのを欠かす日はなかった。

「お父様!が帰ってくると言うのは本当ですか?!それはいつです!?」

僕の父はこの闇の森を治めているスランドゥイル。

父は僕の毎日の日課が面白いらしく、の帰ってくる日を全く教えてくれなかった。

が帰ってくるのは今日かもしれない。明日かもしれない…。

と、いつもの定位置になっている木の上で指折り数えていた。

もう、今日は来ないかな?と諦めていたその時、一人の女性が目の前で現れた。

とても綺麗に手入れされてる漆黒の長い髪。

急いで来たのか、ドレスではなく旅装束を身に纏っていた。

上からだとよく顔が見えない。

「君が探しているのは僕でしょ?」

上を向いて欲しくて、早く見つけて欲しくて…ドキドキしながら声をかけた。

「え?…どこ?」

彼女はキョロキョロ辺りを見回していた。

(あーあ、違うのになぁ。僕はここにいるのに)

などと思いながらまた声をかける。

「クスクス。ほら、ここだよ!上を見てごらん」

彼女と目が合った瞬間、この世の時が止まったかのように思えるほど衝撃的だった。

漆黒の長い髪。

髪と同じ色の綺麗な瞳。

とても美しい顔。

そして…透き通るような声。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「レゴラス…」

…」

レゴラスは木の上から華麗に飛び降り、私の目の前に立った。

「約束…忘れないでいてくれたんだ」

レゴラスは私の頬に手を当ててきた。

「当たり前じゃない…。一時だって忘れたことなかったわ…。ずっと貴方に会いたかった」

私はレゴラスの手の上にまた自分の手を重ねた。

「僕だって会いたかった…。が帰ってくるって聞いた日からもう、早く会いたくて気が狂いそう
だった」

そう言ってレゴラスは空いてる腕で私をグイッと引き寄せ抱きしめた。

私も驚くこともなくレゴラスの背に腕を回す。

レゴラスに再会して、その瞬間に「友情」が「愛情」と変わっていった。

…」

抱きしめたままレゴラスが声に声をかけられた。

「ん?」

、すっごく綺麗になってて…ビックリした」

抱きしめる力が強まり、突然嬉しい事を言われた。

「レゴラスだって…カッコ良くなっててビックリしたわ。それこそ白馬の王子様にピッタリ…」

私はちょっと顔を赤くしながら思った事を口にした。

しかし言われなれてるのか、レゴラスは少し微笑むだけで否定はしなかった。

「僕は『将来絶対に僕がを守るんだ』って思ってた。それこその王子様になりたかった。
今の僕は?から見て僕は君を守れそう?」

レゴラスの顔が段々近づいてくる。

「レ、レゴラス!―――私、帰らなきゃ…」

レゴラスの胸に手をついて離れた。

?」

腕の中からするりと抜け出した私を、レゴラスは少し悲しそうに微笑んだ。

「そうだね…。君のご両親も心配してる。今夜は君のための宴が開かれる。またその時に会おう」

そう言ってレゴラスは素早く“チュッ”と頬にキスをして館の方へ消えていった。

「///レゴラス…」

私はレゴラスの消えていった方をしばらく見つめていた。








「まぁ!様、お綺麗だわ!」
「美しい…」

闇の森の王、スランドゥイル様が開いてくれた私のための宴。

闇の森中のエルフが宴に参加するためにやってきていた。

様々な人が私へ挨拶してくれる。

始めはそれが嬉しくて心からの笑顔だったのに、いつの間にか疲れ果ててしまい引き攣った笑顔になっ
ていった。



「う〜…疲れた〜><!!」

私は人ごみを何とか潜り抜けてテラスへ出てそこから真っ暗な森を見つめていた。

すると、後ろに微かな気配を感じた。

気づく私も私だが、相手はほぼ完全に気配を消していて、逆に相手が誰だかすぐに分かってしまった。

「遅いよ、レゴラス…」

私は前を向きながら後ろにいるであろうレゴラスに向かって言った。

ふわりと後ろから抱きしめられ、レゴラスの顔が肩に乗る。

「僕がいくら気配を消してもには分かっちゃうんだね♪」

「当たり前でしょ?私ほどにレゴラスを分かっている人はきっとスランドゥイル様くらいかしら♪」

私がふふっと笑うと、レゴラスは私の耳に“チュ”っとキスをして「そうだね」と囁いた。

私はレゴラスの腕の中で身体を回転させ、レゴラスと向き合った。

そしてお互い愛しそうに見つめあう。

「レゴラス…、私のこと…好き?」

きっと私たちの想いは同じ。

「え?」

思いもしなかったのか、レゴラスはキョトンとした顔をする。

「私はずっと…幼い頃からレゴラスのこと好きだったよ?レゴラスに逢いたくて、触れたくて、声が聞
きたくて…名前を呼んで欲しくて」

私は自分の気持ちを真っ直ぐにぶつけた。

嘘偽りのない自分の気持ち。

ロリアンにいる頃から本当は分かっていた。

レゴラスに対するこの気持ちの名前を。

「残念…」

レゴラスは悲しそうな顔をして呟いた。

「…え?…何…?」

レゴラスの言葉の意味が分からなくて聞き返す。

今…レゴラスは何て言った?

“残念”そう言わなかった?

頭が一瞬真っ白になる。

、僕の目を見て」

いつの間にか下を向いていた私を、顎を持ち上げて上を向かせる。

瞳と瞳がぶつかる。

、僕はね…君の事を好きと言う言葉で表せないほど愛してるんだ…だから残念」

レゴラスは意地悪そうにニコっと笑った。

「ッ!!もう!レゴラスの馬鹿!!私だって同じくらい貴方のこと想ってるんだから!」

私はホッと安心してレゴラスを力いっぱい抱きしめた。

が帰ってくるのをずっとずっと待っていたんだ。これくらいの意地悪、してもいいでしょ?」

そう言って私の頭にキスをする。

私が顔を上げると、額、瞼、鼻、頬…そして唇にキスの雨が降る。

「私も愛してるわ…」

私たちは深く長い口付けを交わした。



一方、館の中では溜息の渦だった。

女性も男性も、思っていることは皆同じ。

「レゴラス()様が相手じゃ勝ち目がない…」

・ 




「これで誰もにちょっかい出さないね♪」

レゴラスはニッコリと笑って言った。

「え?」

「何でもない☆僕がずっとずっと一緒にいるからは僕の側から離れないで」

そしてもう一度口付ける。

私は永遠に離れないわ…貴方の側から…


                     END



あとがき

この小説は以前のサイトで花梨様にリクしていただいた時に書いた小説です(苦笑)
「あれ?!アップしてなかった!!」と、今更気がついて恐る恐るアップした次第でございます;
最近全然小説が書けてない気がしますが、マイペースで頑張って行きますのでこれからもご愛読お願いいたします♪


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